第32回マルセイユ国際映画祭でグランプリなど3冠を獲得した『春原さんのうた』の杉田協士監督の長編4作目。短歌を原作とした作品を中心に送り出してきた杉田の、デビュー作『ひとつの歌』以来12年ぶりのオリジナル作品。子供の頃に声をかけた人物に大人になってから再会し優しく手を差し伸べる女性を描くヒューマンドラマ。主人公の春役には『スウィートビターキャンディ』の小川あんが、共演には眞島秀和と中村優子が名を連ねる。

■見どころ
①2021年に俳優としての活動を再開し、演技派俳優・満島ひかりを目指しているという小川あんの演技に注目。
②前作『春原さんのうた』でも感じられた、監督杉田の描き出す空気感をゆっくり楽しみたい。
③こだわりぬかれたカメラワークと、あえて横を短くした画面比によって映画の世界に没入できる。

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書籍化を熱望された伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキの傑作青春私小説「笑いのカイブツ」を原作に、主演を『キングダム』など多数のドラマ映画で活躍する個性派俳優・岡山天音で送る。笑いに人生を捧げた不器用な男の半生を描く人間ドラマ。『告白』(監督・中島哲也)『パッチギ』(監督・井筒和幸)などで助監督を務めてきた滝本憲吾が監督として長編商業映画デビューを果たした作品。仲野太賀や菅田将暉、松本穂香ら実力のある俳優も出演する。

■見どころ
①人間関係不得意と言われた実在の人物を岡山天音が好演。その静かなる狂気に心震える。
②熱狂的な読者が付いたWeb「cakes」連載の私小説の映像化決定にファンも歓喜。
③笑いという夢に取り憑かれ、堕ちるところまで堕ちたツチヤタカユキの描く世界に涙する。

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『そして、バトンは渡された』などを手掛け瀬尾まいこによる同名小説が原作のヒューマンドラマ作品。それぞれが抱える病気や障害をフューチャーしながら、思いやりや支え合いの精神を描いた人間ドラマが主題となっている。本作はSixTONESの松村北斗と上白石萌歌が同じ職場で働く山添役と藤沢役で共演し、ダブル主演を務めた。三宅唱が監督を務め、光石研やりょうなど味のあるベテラン俳優陣が脇を固めている。

■見どころ
①心のどこかで苦手意識のある相手でも、真っ直ぐに向き合うことの大切さについて教えてくれる作品
②目に見えないながらも、病気や障害を抱えて懸命に生きる人間のたくましさに気付かされる
③生きづらいと言われる現代社会でも、ちょっとしたことで生きやすさを見つけられると気づける一作

高度成長期に造られてから半年が経ち、公園や団地が広がる静かな場所・多摩ニュータウン。そこで暮らす3人の女性が街を移動し、街の記憶に触れながら見ず知らずの人のことを想像する物語。監督は清原惟。主役の3人の女性は知珠役が「ふきげんな過去」の兵藤公美、早苗役が「小さな声で囁いて」の大場みなみ、夏役が「レジェンド＆バタフライ」の見上愛となっている。2023年には第73回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に出品された。

■見どころ
①街の記憶と人の想像が映画や音楽、ダンスなどの表現手法で魅力的に描かれる。
②個性的な女優たちがそれぞれの役柄に深く感情移入し、微妙な表情やしぐさで人物像を見事に表現している。
③春の日差しや夜の闇によってさまざまな表情を見せる多摩ニュータウンという街に興味を抱く。

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「うつろいの標本箱」や「まく子」で邦画シーンの注目を集めた若手の女性監督、鶴岡慧子が監督・脚本を手掛けた、青森県弘前市を舞台にした作品。今や人気作に引っ張りだこの堀田真由を主演に迎え、小林薫も父親役でバイプレイヤーに入るなど、実力のある俳優陣が揃っている。静謐な雰囲気と美しい映像が特徴的で、リラックスした雰囲気で鑑賞できる空気感に加えて、伝統工芸の後継者問題という社会性をも併せ持っている。

■見どころ
①映画はオール弘前市ロケとなっており、東北のことをより知られる内容になっている。
②津軽塗という伝統工芸についてや、その現状などにリスペクトとを欠かさない描写。
③弘前大学出身の俳優が出演しているなど、この地方の方言である津軽弁の完成度が高い。

秋山恵二郎

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